乳がん手術後のブラジャー選び_ver3
乳がん手術後のブラジャー選び
~ 術後すぐ〜日常生活まで 時期別のポイント ~
もくじ
H2乳がん手術後にブラジャーは着けるべき?
H3乳がん手術後すぐのブラジャー着用は必要?
H3ノーブラで過ごすときの注意点と快適な代替アイテム
H4ノーブラで過ごすときの注意点
H4快適な代替アイテム
H2乳がん用ブラジャーの正しい選び方【時期別】
H3術直後(~1か月):縫い目・締め付け・素材に注意
H4綿やシルク素材のノンワイヤーで前開ブラジャー
H4肌トラブルを避けるためのタグ・縫い目対策
H3回復期(1か月~3か月):傷の状態に合わせて選ぶ
H4パッド用ポケット付きで形を整えやすいブラジャー
H4肩紐の太さ・胸元のデザインにも注目
H3日常生活再開後(3か月~):見た目も重視したおしゃれ対応
H4普段のブラジャーとの違いと自然に見せる工夫
H2ブラジャー選びに迷ったときのチェックポイント
H3信頼できるブランド・医療機関の提案商品を活用
H3乳がん用ブラジャーおすすめブランドの活用
H3乳がん用ブラジャー選びのコツ
H3試着や返品が可能かどうかを確認
H2乳がん用ブラジャーの保険適用や購入費用助成
H3民間保険の適用
H3自治体の助成金や補助制度
H2まとめ
(リードー文)
乳がん手術後に安心して使うことができるブラジャーはあるのだろうか?そもそも着用してもいいのだろうか?
この記事では、乳がん患者さんやご家族のそんな疑問にお答えしていきます。この記事が、皆さまの不安を少しでも和らげ、ブラジャー選びや手術後の毎日が、ほんの少しでも軽やかで心地よいものになるためのお手伝いができると幸いです。
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H2乳がん手術後にブラジャーは着けるべき?
乳がん手術後の下着選びは、想像以上に悩ましいものです。この記事では、乳がん手術後のブラジャーの必要性について、医師や看護師の意見を交えながら、あなたが心から納得できる選択をし、無理なく快適な毎日を過ごすためのポイントをお伝えします。
H3乳がん手術後すぐのブラジャー着用は必要?
手術を終えたばかりの体はとてもデリケートです。ブラジャーを着けるべきか、それとも着けない方が良いのか、多くの方が悩むポイントです。
手術後の傷口保護、リンパ浮腫の予防・軽減、そして精神的な安心感のために、術後専用ブラジャーや、肌に優しくサポート力のある下着の着用を推奨することが一般的です。
特に手術直後は、患部を優しく保護することで、日常生活での不意な接触や摩擦から守る役割も期待できます。
医師は患者さん一人ひとりの状態や手術内容を踏まえたうえで、ご本人の気持ちを尊重した最適な方法を一緒に考えてくれます。
無理に誰かに勧められるものを選ぶ必要はなく、心身ともに負担の少ない方法を納得して選ぶことが大切です。
H3ノーブラで過ごすときの注意点と快適な代替アイテム
手術後のブラジャーの圧迫感や不快感から解放されたいと、ノーブラを希望する方もいらっしゃいます。
その際は、主治医にご相談の上、以下の注意点を参考にお過ごしいただければと思います。
H4ノーブラで過ごすときの注意点
1.傷口への配慮
術後の傷を衣類との摩擦や、不意な衝撃から守る工夫が必要です。
特に縫合部やドレーン跡などの傷が安定するまでは、保護テープを使用したり、直接衣類が触れないようにガーゼや柔らかい布で保護したりすると安心です。
2.揺れや動きによる不快感
胸の揺れが傷の痛みに繋がることがあります。
特に動作が大きいときや、外出時は注意が必要です。
3.体温調節
下着には保温の役割もあります。
特に寒い季節は、胸元が冷えないように衣類で調整しましょう。
実際にノーブラで過ごす中で、周囲の視線が気になって落ち着かないことがあるかもしれません。その際は、次にご紹介する「代替アイテム」を活用するなど、ご自身が快適に過ごせる方法を試してみてください。
H4快適な代替アイテム
ノーブラに近い解放感を保ちつつ、上記の注意点をカバーできる様々な代替アイテムのうち、一部をご紹介させていただきます。
1.カップ付きタンクトップ・キャミソール
手軽で人気のある選択肢です。柔らかい素材で肌触りが良く、締め付け感も少ないものが多いです。カップがバストを優しくホールドし、透けや揺れを軽減してくれます。前開きタイプなら着脱もさらに楽になります。
2.ハーフトップ・スポーツブラ(ソフトタイプ)
ワイヤーがなく、伸縮性のある素材で作られたものがおすすめです。
傷に響かないよう、縫い目がフラットなものや、肌側の素材が優しいものを選びましょう。適度なホールド感がありながら、ブラジャーほどの窮屈さはありません。
3.ナイトブラ
最近話題になることが多いナイトブラは、夜寝るときに着用しても苦しくならず、バストをやさしくホールドする機能が備えられているため、肌に優しく、ゴロゴロ休むときにもズレが気にならなくて使いやすい、という患者さんの声がよく聞かれます。
4.胸パッド・ニップルシール
どうしても下着を着けたくないけれど、最低限のカバーはしたいという場合に有効な選択肢です。柔らかい素材の胸パッドを直接衣類に貼ったり、ニップルシールを使用したりする方法もあります。
4.5.肌に優しい素材のインナー
直接肌に触れるインナーは、オーガニックコットンやシルクなど、肌への刺激が少ない素材のものを着用するだけでも、傷への摩擦を和らげ、安心感を得られることがあります。
これらのアイテムを選ぶ際は、「締め付けない」「肌に優しい」「着脱しやすい」をキーワードに、ご自身の体調やその日の気分に合わせて選んでみてください。
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H2乳がん用ブラジャーの正しい選び方【時期別】
この章では、時期別・目的別のブラジャー選びのヒントをお伝えします。乳がん手術後のデリケートな時期(~1か月)から、少しずつ活動的になる時期(1か月~3か月)、そしておしゃれも楽しみたいと願う時期(3か月~)まで、体の状態や目的に合わせたブラジャー選びには、いくつかのポイントがあります。
H3術直後(~1か月):縫い目・締め付け・素材に注意
手術から間もないこの時期は、傷の保護が最優先です。
心身ともにデリケートな時期だからこそ、下着選びは慎重に行い、少しでも快適に過ごせる工夫をしましょう。
H4綿やシルク素材のノンワイヤーで前開きブラジャー
綿やシルク素材のノンワイヤーで前開きブラジャーがおすすめです。
ワイヤーが入っていない「ノンワイヤータイプ」のブラジャーで、肌に触れる素材は、綿やシルクなど通気性と柔らかさに優れたものを選びましょう。ナイロンやポリエステルなど化学繊維は刺激になりやすいため、避けた方が無難です。また、腕を上げるのがつらい方にとっては前開きタイプがおすすめです。ボタンやファスナーで簡単に着脱でき、無理のない動作で日々のケアを行えます。
H4肌トラブルを避けるためのタグ・縫い目対策
傷口周辺の肌は非常に敏感です。ブラジャーの縫い目やタグが当たるだけで、痛みやかゆみ、炎症の原因になることもあります。できるだけ縫い目が外側にある「外縫い」タイプ、あるいは縫い目そのものが極力少ないシームレスタイプを選ぶとよいでしょう。
また、洗濯タグが肌に当たらないように工夫された製品や、取り外せる仕様のものもおすすめです。
この時期は、「痛みや不快感のない時間」をどう確保するかが大切です。前述しましたポイントを参考にしていただけますと、少しでも快適で心地よい術後の生活に繋げていただくことができるかもしれません。
~医師からのお役立ちコメント~
乳がん手術後の創保護テープは、衣服などが触れることによる創部への刺激や乾燥を防ぎ、ケロイド状に皮膚の盛り上がりや、かゆみを予防する効果が期待できます。3~6ヶ月程度保護することが勧められることが多いですが、医師の指示に従い、使用しましょう。
術後放射線治療を行う場合は、放射線照射部位にテープを貼ることはできません。放射線治療終了後の皮膚の状態により、テープを貼るのを再開できるかどうか、医師や看護師に相談してから使用しましょう。
H3回復期(1か月~3か月):傷の状態に合わせて選ぶ
手術から1か月を過ぎ、少しずつ動けるようになると、これまで気にならなかった「胸の左右差」や「見た目」に意識が向きはじめます。ブラジャー選びも、その時の気持ちと身体に合わせた柔軟な対応が必要です。この時期は、機能性はもちろんのこと、見た目の美しさやファッション性も考慮したブラジャー選びに挑戦してみましょう。
H4パッド用ポケット付きで形を整えやすいブラジャー
多くの専用ブラジャーには、パッドを入れるためのポケットが付いています。これは乳房の左右差を自然にカバーできるだけでなく、服を着たときのシルエットを整える効果もあります。パッドは取り外し可能なタイプが多く、ご自身の状態や好みに合わせて調整できます。特に胸のふくらみが気になる方や、外出時の服装を意識したい方には心強いアイテムです。
「見た目」が少し整うだけで、気持ちが前向きになることもあります。
H4肩紐の太さ・胸元のデザインにも注目
ブラジャーのフィット感も大切です。肩紐が細すぎると食い込みやすく、肩や首の負担にもなります。太めで柔らかな素材のストラップは、安定感がありながらも肌に優しいため、安心して着用できます。
また、胸元のデザインにも注目してみてください。開きすぎたデザインはパッドや胸元が見えやすくなり、外出時の不安要素になります。レースや布が適度にカバーしてくれるタイプを選ぶと、日常生活でのストレス軽減に繋がります。
~医師からのお役立ちコメント~
術後の乳房の形の変化が気になるときには、パッドなどで調整する方法もありますが、創部の擦れやムレが気になるということがあるかもしれません。その場合には、下着は着心地の良い素材のものを選択し、アウターを前身頃に布地をたっぷり使用したフレアーなデザインのブラウスなど選ぶと良いでしょう。また、ニットやカットソー素材は身体のラインが出やすいので、しっかりした素材のジャケットやジレ(ベスト)などを羽織ることで、カバーすることができます。
H3日常生活再開後(3か月~):見た目も重視したおしゃれ対応
術後のケアが落ち着き、少しずつ日常生活が戻ってくると、下着にも「おしゃれ」や「気分の上がるデザイン」を求めるようになります。外見を整えることは、「自分らしさ」や「前向きな気持ち」を保つ大切な要素です。
H4普段のブラジャーとの違いと自然に見せる工夫
専用ブラジャーは医療用といえども、見た目が大きく違うわけではありません。ただし、自然に見せるためには細やかな工夫が施されています。
~専用ブラジャーの工夫~
1.左右のバランスを整えるためのパッド
2.肌色に近い色味
3.ラインを美しく見せるカッティング など
普段使いしやすいデザインも増えています。また、服に響きにくい素材や縫製になっているため、日常生活に違和感なく溶け込めます。
以上のような専用ブラジャーの工夫を踏まえ、次の章では、具体的なブラジャー選びのポイントを解説していきます。
~医師からのお役立ちコメント~
術後の皮膚トラブルを予防するために、スキンケアは重要です。術前術後に抗がん剤治療を行う方は特に、薬の副作用によって皮膚にトラブルを起こす可能性が高くなるため、スキンケアを心がけると良いでしょう。予防的なスキンケアは、香りや使用感の合うお好みの保湿剤で構いません。治療による皮膚トラブルが起きてしまった場合には、医師に相談して対応方法を確認してください。
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H2ブラジャー選びに迷ったときのチェックポイント
ブラジャー選びは、見た目だけでなく「快適さ」や「安心感」が大切なポイントとなります。胸の締めつけが少なく、着け心地がやさしいものを選ぶことで、日常がほんの少し楽になり、穏やかに過ごす手助けとなります。この章では、信頼できる商品選びのコツや購入方法、試着の重要性など、迷ったときのチェックポイントをご紹介します。
H3信頼できるブランド・医療機関の提案商品を活用
ブラジャー選びに迷ったとき、最も安心できるのが「信頼できるブランド」や「医療機関が推奨する下着」を選ぶことです。特に、乳がんや体調の変化をきっかけに下着を見直す方が増えており、医療機関と連携して作られた製品は、肌へのやさしさや着脱のしやすさなど、実際の声を反映した設計が特徴です。
有名下着メーカーの中には、医療従事者や患者の声を取り入れて開発された「やさしい着け心地」のシリーズを展開しているブランドもあります。また、看護師や下着フィッターが常駐し、丁寧に身体の状態に合った提案をしてくれる専門店もあります。
H3乳がん用ブラジャーおすすめブランドの活用
ブラジャーを購入する際は、店舗購入やネット通販等、ご自身の体調や生活スタイルに合わせて、無理のない方法を選ぶことが大切です。
訪問サポートサービスやオンライン相談を行っているブランドもありますので、下記にて一部ご紹介します。
1.ワコール リマンマ (https://www.wacoal.jp/remamma/consultation/room.html)
全国5カ所に専用相談ルームがあり、近くに店舗がない場合は無料相談会や出張相談会も実施しています。自宅からパソコンやスマートフォンでアドバイザーに直接相談できるオンラインサービスも提供しています。
2.アボワール (https://avoir-kyoto.com/shop/)
「出張試着サービス」を実施しており、スタッフが商品を持参して希望の場所まで訪問し、実際に試着や相談が可能です。オンラインでの相談や問い合わせも可能で、サイズや商品の選び方などについてメールやフォームで気軽に相談できます。
3. セシール (https://www.cecile.co.jp/feature/bcb/)
乳がんを経験された方に向けたブラ(ブレストケアブラ)を展開しており、肌へのやさしさ、着脱のしやすさ、見た目への工夫を施した専用品を提供しています。
4. ユニクロ (https://www.uniqlo.com/jp/ja/)
乳がん患者さん専用の商品はありませんが、エアリズム前あきブラやワイヤレスブラなどは乳がん術後や放射線治療中の患者さんからの高評価が多く寄せられています。専用品と同様に乳がん術後のブラとして使用することができます。
H3乳がん用ブラジャー選びのコツ
最近では、色やデザインのバリエーションが豊富な専用ブラジャーも増えてきました。レースをあしらった華やかなデザインや、明るいカラー展開のものも多く、気分や様々なシーンに合わせて選ぶことができます。
~専用ブラジャー選びのポイント~
1.サイズが合っているかどうか
2.長時間つけていても苦しくないかどうか
3.脱ぎ着がしやすいかどうか
4.素材が肌にあうものかどうか
上記のようなポイントを踏まえて最適な一枚をお選びいただければと思います。
H3試着や返品が可能かどうかを確認
体調や体型が変化しているときほど、下着選びにおいて「試着できるか」「返品可能か」はとても重要なチェックポイントになります。
特に、術後や療養中の方は、肌の敏感さや可動域の制限など、通常とは異なる着け心地が求められるため、試着の可否が選ぶ際の安心感に直結します。
最近では、衛生管理を徹底した上で「試着可」や「返品OK」を掲げる下着ブランドや通販サイトも増えています。初めて利用するブランドやサイズが不安な場合は、返品対応の有無を事前に確認することで、購入後のストレスを減らすことができます。
医療系下着の場合、返品不可のケースもあるため、注意が必要です。
また、試着せずに購入する場合は、「口コミ」「使用レビュー」「着用写真」なども参考にしましょう。自分と同じ年代や体型の人の感想は、選ぶ際の大きな手がかりになります。
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H2乳がん用ブラジャーの保険適用や購入費用助成
専用の乳がん用ブラジャーは医療用品としての側面もあり、一般の下着とは異なる工夫がほどこされています。費用や購入方法、また公的な補助や保険の適用について知っておくことで、負担軽減に繋がります。
H3民間保険の適用
一部のがん保険では、診断給付金や治療給付金を「自由に使える一時金」として受け取れるため、その給付金を補整下着の購入費用に充てることが可能です。ご自身が加入している保険会社に問い合わせて、対象となるか確認しておくと安心です。
H3自治体の助成金や補助制度
乳がん手術後の補整下着や人工乳房などに対し、自治体によっては購入費の一部を助成する制度があります。たとえば、東京都北区では、乳房補整具などの購入に対して10万円までの補助金が出る制度が設けられています。(令和7年5月現在)
こうした制度を利用するには、医療機関の診断書や領収書の提出が必要になることが多く、また申請の期限が設けられていることもあります。助成を受けたい場合は、お住まいの自治体の「福祉課」「健康推進課」が主な窓口となります。また、がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」窓口では、他にも利用できる支援制度の情報や、心のケアを含めたサポートも受けられることがあります。
ぜひ一度お住まいの自治体や「がん相談支援センター」にお問合せすることをおすすめします。
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H2まとめ
術後の身体の変化への戸惑いと向き合いながらも「女性としての自分」を大切にしたい、そんな想いでこの記事にたどり着かれた方もおられることと思います。
肌に優しい素材、身体を締め付けすぎない工夫、着脱のしやすさ、そして心が華やぐデザイン。これまでお伝えしてきた情報が、そんなあなたの具体的なお悩みや疑問を少しでも解消し、「試してみようかな」という小さなきっかけとなりましたら幸いです。
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【参考文献】
・日本乳癌学会
https://www.jbcs.gr.jp/
・おしえて乳がんのこと 乳がん手術後の下着
https://oshiete-gan.jp/breast/treatment/follow-up/underwear.html
・国立がん研究センター乳房切除後の下着の選び方https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/division/support_card/5.pdf
・静岡県立静岡がんセンター
https://www.scchr.jp/book/manabi2/manabi-body12.html
・ワコール リマンマ
https://www.wacoal.jp/remamma/
・北区 がん患者のウィッグ等購入費助成事業
https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/medical/1008518/1008525.html
・
監修:医師 横田 小百合
企画構成:Life Star 編集部
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【クレジット表記】
① 御名前(フルネーム)
横田小百合 よこたさゆり
② 先生の略歴とご紹介文(60文字~100文字程度)
医師。専門分野は緩和ケア。がん治療認定医、総合内科専門医、日本緩和医療学会専門医・指導医。現在は都内病院の院内緩和ケアチームの症状緩和担当として日々患者さんと接している。
③ 先生の顔写真
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